炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)以外の生体元素をミネラルと呼びます。マグネシウムは体内で様々な酵素反応に関与する必須ミネラルで、エネルギー、筋肉、神経、骨など、体のあらゆる機能をサポートします。
マグネシウムの役割
マグネシウムの機能は以下の通りです。
⚡エネルギー生成
・ATPの合成に不可欠
⚙️酵素のサポート
・600種類以上の酵素反応に補因子として関与
・糖代謝やDNA、タンパク質、セロトニンやGABAといった脳内ホルモンの合成にも関与
💪筋肉と神経の機能
・筋肉と神経の興奮性を抑制し、正常な神経伝達をサポート
🦴骨の健康
・骨の形成に必要なミネラル
低マグネシウム血症の症状
低マグネシウム血症の際の症状は以下の通りです。
1. こむら返り(筋痙攣)
マグネシウムは筋肉の興奮を抑える働きがあるため、低下すると筋肉が収縮しやすくなる
2. 不整脈(期外収縮・心房細動など)
透析後に増えやすい
心筋の電気的安定性が低下するため
3. テタニー症状(しびれ・つっぱり)
マグネシウム低下は 低カルシウム血症を助長
4. 全身倦怠感・脱力感
マグネシウム不足でATP利用が低下
”透析後のだるさ”の一因
5. 食欲低下・吐き気
胃腸の平滑筋が過緊張気味になる
高マグネシウム血症の症状
高マグネシウム血症の際の症状は以下の通りです。
5mg/dL以上
嘔吐、筋脱力、傾眠、徐脈、低血圧など
12mg/dL以上
意識混濁や呼吸筋麻痺が生じ、重症化すると心停止に至る可能性がある
血液透析患者における血清マグネシウム値の変動
血液透析患者さんの血清マグネシウム値には様々な要因が関与しており、以下に示します。
🔼 マグネシウム値が上がる要因
1. 腎排泄の低下
健常人では摂取したMgの約70%が腎臓から排泄
透析患者では排泄不能 → 体内に蓄積
2. マグネシウム含有薬の使用
酸化マグネシウム(マグミット®)
水酸化マグネシウム(ミルマグ®)
胃酸中和(制酸作用)腸内で水分保持し排便促進(緩下作用)
過剰使用で血中マグネシウム上昇
🔽 マグネシウム値が下がる要因
1. 食事制限による摂取不足
カリウム制限のためにMgの主要な摂取源である野菜・海藻・果物が制限される
2. 透析による除去
透析液Mg濃度:通常1.0 mEq/L(=0.5 mmol/L ≒ 1.2 mg/dL)
血清Mg正常値(1.7~2.4 mg/dL)より低いため、透析中にMgが除去される
※1.2mEq/L (1.5 mg/dL) の透析液 (キンダリーAF5号) も販売されて使用可能
3. 消化管からの吸収低下
消化吸収障害、下痢など
血液透析におけるマグネシウムについて
一般の血清マグネシウム値の正常値は1.7~2.4 mg/dL前後ですが、血液透析患者さんを対象とした研究では、血清マグネシウム2.7~3.0mg/dlがもっとも死亡率が低いことが示されています (Sakaguchi Y, et al. Kidney Int. 2014; 85: 174-81)。
血液透析患者さんを対象とした研究で、マグネシウムの血管石灰化(Tsai S, Li Y, et al. BMC Cardiovasc Disord. 2023; 23:610)、骨折 (Sakaguchi Y, et al. J Am Soc Nephrol. 2018; 29: 991-999)、筋痙攣 (Srisuwarn P, et al. Kidney Med. 2021; 12; 4)、不整脈 (Tumlin et al. BMC Nephrology 2019; 20: 80, Toida T, et al. Cardiorenal Med. 2024; 14: 105-112) の抑制効果が示唆されています。