炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)以外の生体元素をミネラルと呼びます。亜鉛は体内に存在する量はごくわずかですが、生理機能の維持に必須な微量ミネラルです。
ミネラルは、体の構成成分や機能調整に関与し、たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミンと並ぶ五大栄養素の一つです。
亜鉛は体内で300種類以上の酵素の働きを助け、たんぱく質合成や新しい細胞の生成に不可欠な必須ミネラルです。体の成長や新陳代謝、創傷治癒を促進するほか、免疫機能の維持や正常な味覚の保持にも重要な役割を果たしています。
亜鉛欠乏でみられる主な症状
亜鉛欠乏は、以下のような症状と関連するといわれています。
👅 味覚障害・食欲低下
🛡️ 免疫機能低下・感染症の増加
💇 皮膚・毛髪異常
(皮膚炎、湿疹、脱毛、毛髪の細小化 など)
🩹 創傷治癒の遅延
🧠 精神・神経症状
(抑うつ、意欲低下、集中力低下、不安感 など)
🩸 貧血
⚖️ 成長障害・性腺機能低下
血液透析患者さんと亜鉛欠乏
血液透析患者さんでは、
•透析に伴う食事制限により、亜鉛の摂取量が推奨量より少なくなりやすいこと
•リン吸着薬により、腸管内で亜鉛が吸着され、吸収が阻害されること
などの理由から、亜鉛欠乏をきたしやすいとされています。
亜鉛欠乏症の頻度
亜鉛欠乏症の診断基準は亜鉛欠乏の診断指針2024によると以下のように定められています。
血液透析患者を対象とした研究では、
•亜鉛 60 μg/dL未満:51.0%
•亜鉛 60~80 μg/dL未満:44%
が認められたと報告されています(透析会誌 2018;51:369–377)。
このように、多くの透析患者さんに亜鉛欠乏が認められています。
亜鉛欠乏への対応
「亜鉛欠乏症の診療指針2024」では、血清亜鉛値が低値の場合、
•牡蠣 •牛肉 •レバー •魚介類 •穀類 •豆類 •種実類 •チーズ
など、亜鉛含有量の多い食品の積極的な摂取が推奨されています。しかし、透析患者さんではリン制限があり、それらを摂取することが困難な場合もあります。亜鉛欠乏症の症状を伴い、血清亜鉛値が低い場合には、食事のみでは補充が不十分であり、亜鉛製剤による補充療法が必要とされています
(日本臨床栄養学会雑誌 2024;46(4):224–288)。
現在、低亜鉛血症に対して保険適用となっている亜鉛製剤は、
•ヒスチジン亜鉛(ジンタス®)
•酢酸亜鉛(ノベルジン®)
です。ヒスチジン亜鉛(ジンタス®)は2024年8月に発売され、1日1回の内服で、消化器症状等の副作用も少なく使用しやすい薬剤です。
亜鉛補充療法により期待される効果
亜鉛投与により、以下の効果が期待されると報告されています。
•貧血の改善
•味覚障害の改善
•栄養状態の改善
•炎症反応の低減
•抗酸化作用
•免疫機能の改善
•掻痒感の改善
まとめ
以下に血液透析患者さんと亜鉛のまとめを記載します。
・亜鉛は、生理機能の維持に必須な微量ミネラル
・血液透析患者の多くは亜鉛欠乏症または潜在性亜鉛欠乏状態
・透析患者は食事制限のため食事より亜鉛の補給が困難
・ヒスチジン亜鉛(ジンタス®)は低亜鉛血症に対し保険適応があり、1日1回の内服で効果があり、副作用が少ない
・亜鉛投与により、貧血改善、味覚改善、栄養状態の改善、炎症反応の低減、抗酸化作用、免疫機能改善、掻痒感の改善など多くの効果が報告されている