2025/04/27 (日)
有痛性筋痙攣について
有痛性筋痙攣はふくらはぎ起こる場合、「こむらがえり」や「下肢つり」と呼ばれます。今回は有痛性筋痙攣の症状、原因や対処方法について解説します。
<症状>
主に除水が進んだ透析後半に起こります。主に腓腹筋の異常な収縮によりふくらはぎが硬く膨張し、足や足指が下方へ屈曲し、激痛が数分間持続します。筋痙攣は下肢に生じることが多いが、上肢、背部、腹部などにもおこることがあります。
<原因>
原因の詳細は不明ですが、多くの症例では透析により除水が進んだ状態や血圧低下時に起こることが多いため、筋肉を栄養する血流の関与が考えられています。透析により急速に除水を行った場合や、目標体重(ドライウェイト)の設定が低すぎる場合には、血管外から血管内への体液移行が不十分となり、血管内の血流量が過度に低下します。すると、筋肉内に十分な血液が行き届かなくなり、筋痙攣が生じると考えられています。
また、血液中の電解質(ナトリウム、マクネシウム、カルシウムなど)や脂質エネルギー代謝に必要なL-カルニチンの濃度が低くなった場合も、筋痙攣が起こりやすくなることが知られています。
<対応>
以下のような対応を必要に応じて行います。
・除水速度を下げ、補液(生理食塩液やオンライン補充液)を行う。
・ふくらはぎで起きた場合は、筋肉が伸展するように以下の写真のように足先を手前に屈曲させる。
・痛みのある部分を温めたり、マッサージする。
・芍薬甘草湯を内服する。
・10%塩化ナトリウム注射液 20mLあるいは50%ブドウ糖液 20mL、カルシウム製剤(カルチコールR)を透析の回路より注入する。
<予防>
筋痙攣は除水に伴う血管内脱水により出現することが多いため、発症予防のためには急激な除水や過度の除水をしないよう、ドライウェイトの設定や除水速度の見直しをします。血清カルシウム濃度が低下し発症することがあり、低カルシウム透析液を使用している場合は、カルシウム濃度の高い透析液への変更やカルシウム製剤の投与を検討します。カルニチン欠乏が関与している場合もあり、L-カルニチンの投与を検討します。芍薬甘草湯の内服が予防に有効な場合もあります。筋痙攣をおこしやすい部位を低温火傷に注意しながら、ホットパックなどで温めておくことも考慮されます。ストレッチ運動をすると筋肉と腱の柔軟性が高まり、筋痙攣の予防となるため、適度な運動やリハビリテーションも予防となります。筋痙攣が局所だけでなく、全身性であったり、意識障害を伴ったりするような場合は、てんかん発作や中枢神経疾患などの可能性があり、原疾患の治療を行います。